第1216回 通常例会「高齢者と薬について」

開催日時 平成29年4月14日 金曜日
開催場所 西尾信用金庫中央支店2階
合唱曲 我らの生業・4つのテスト
卓話者米津老人保健施設の施設長 近藤照夫 氏
お客様
司会進行例会:三浦隆司君

会長挨拶

 こんにちは。きょうはご多忙のなか、元西尾市民病院長 近藤昭夫先生にお越し頂きありがとうございます。近藤先生のご紹介は後程 三浦隆司君より申し上げさせて頂きますが、お話の内容は「高齢者と薬について」とお聞きしています。斯く申し上げさせて頂いています私が、いま正にその最たる者であり毎朝一食に紛う(まがう)種類の薬にたよっています。

 先月、3月ですが厚生労働省は「簡易生命表」と「完全生命表」を発表しました。
完全生命表は5年毎の国勢調査や人口動態統計値によって算出するとのことです。今回は2015年度分より算出された確定値です。出された平均寿命の数値を正確に記憶されている方はいますか。その数値はそれに近い人ほど正確に記憶していると思います。それは私です。男性80.75歳、女性86.99歳でした。最速ネットで詳細を調べました。

平均寿命はその年に誕生した者の平均余命のこととわかりました。しかも生命表には年齢に応じた平均余命が記載されています。何とか2桁を保ちホッとしています。皆さんも後程平均的にあと何年生きられるかを確認しておくと良いと思います。「なにを」「いつ」の決断が容易となります。

 だれも高齢になることは不安だと思います。健康、お金、孤独等不安の要素はたくさんあります。
何と云っても自分にとって今より高齢になった経験はないことが不安だと思います。しかし、これは幾つになっても同じことと思います。以前100歳を過ぎた金さん銀さん姉妹がテレビで対談しているのを見ました。その中で、
 司会者「こんなに多くのテレビCMに出演し、お金は何に使うのですか」
 キン・ギン「老後のためだです」
こんなやり取りがありました。

それでは、本日も宜しくお願い致します。

出席報告
会員総数 出席免除者 本日の出席会員数 MU数 本日の出席率(%) 修正出席率(%)
57 31 52   94.55 100

スマイル委員会報告

【中根勝美会長】
 米津老人保健施設長 近藤照夫先生
 本日は卓話にお越し頂きありがとうございます。本日のテーマ、高齢者と薬で有りますが二ツとも最重要テーマです。
よろしくお願いいたします。

【細川和好幹事】
 近藤照夫様、「高齢者と薬」の卓話は、介護現役世代として拝聴できることを嬉しく思います。
 【KIRARA俳句】 生き生きて残花となるも生き生きて・・・残花とは葉桜になっても残っている花で春の季語。生への執念を桜に喩えました。

【鈴木善和君】
 海外出張の中国でフォアグラを食べ過ぎ、同行社員共々下痢をし、帰国便の中では死んでいました。
 美味い物の食べ過ぎ注意です。

【三浦隆司君】
 本日は近藤先生、卓話宜しくお願い致します。
 私もクスリを飲む世代に突入しました。

【杉田芳男君】
 西尾と西尾の抹茶をPRする所をOpenしました。
 お出掛けください。

卓話

高齢者と薬について(米津老人保健施設の施設長 近藤照夫氏)


講師の紹介をする三浦君

本日の講師

近藤照夫氏

高齢者と薬について
 高齢者の治療をする場合はリスク、手術もそうですが色々問題点があるということで、私が最近気付いたことと医者の中、学会の中で高齢者に対する薬の使い方についてもっと慎重にしようという雰囲気が出てきたことをお話ししようかと思っております。

 昔から子供に対する薬は非常に慎重で色々言われていましたが、内科、成人の方になれば薬の年齢に対するに対する感覚は若い人も年取った人も同じでした。しかしどうも違うということが最近言われています。

 治療する事は皆さん良い事ばかりだと思っているかもしれませんが絶対リスクがあります。手術なら直ぐ分かりますが薬でもあります。リスクは高齢者になればなる程高くなっていきます。よく話をするのですが、薬というのは反対から読むとリスクとなります。必ず薬にはリスクがありますと言うことです。

 治療というのは医学的にこうだからこのようにしましょうと決まると思うのですが、若い人の場合は治療を提案した時の幅は非常に狭いです。なぜかというとその人達は体力的にしっかりしている事と、その人達の治療の目的がはっきりしているからです。まだ皆さんお元気だから治療の幅が狭い範囲におられますが、治療してある程度治り、社会に復帰し、社会に貢献するという目的がはっきりしているのですが、高齢者になるとそこが家族に対する責任や社会に対する責任が非常に少なくなって、残っている人生をいかに自分の為に使うかという事が重要になってきますので、選択する基準が変わってきます。
なので治療の決定には自分の生き方やどうやって生きるのか、最後どうやって死ぬのかということが非常に重要になってきます。それは人生観やその人の価値観との兼ね合いで、どう様な治療を選ぶかという事になってくるかと思います。

 薬を選択する場合もそうですが、高齢者にとって残りの人生、平均余命との兼ね合いや自分がリスクをどの程度取るかとのバランスを決めていかなければなりません。EBMという言葉を聞いたことがありますか。10万人、20万人という人に対してある治療をすると、どの様な結果でどの様な良い事があったか。それを根拠に治療をしようというのが、1900年の後半から2000年にかけて世界中に席巻しました。それが全て正しいかどうかという事は非常に疑問ですが、皆さんそういう根拠で治療の薬を選択されております。しかし高齢者になるとそれが当てはまるかどうかわからない。大規模治験薬でも75~80歳の人がどれ程治験の数の中に入っているかわからない。実際殆どは40~60代の人が入っているが、それが元に行われているのでからけしからんという意見もあります。
これからは高齢者も増えて来くるので、データも増えてくるとは思いますが、先程の人生観や価値観をどうやって入れるかというのが全然入っていません。そこで最近はVBM(Value Based Medicine:患者さんにとっての価値に基づく医療)というのが増えてきました。多分ここ数年後に非常に広がっていく概念ではないかと思っています。

 高齢者にリスクが増大するというのは、年を取ってくると薬を解毒するといった、代謝する機能が落ちる。排泄する機能も落ちてくる。同じ薬の量を飲んでも40代50代の人が飲んだのと、80代の人が飲むのでは同じ様な経過で飲んだ場合、薬は半分は薬で半分は毒ですからそれが消えていくのにすごく時間が掛かってしまう。いつ迄経っても薬が残っており、極端なこと言うとある範囲を越えれば毒の領域に入ってしまう危険性がある事が事実です。お年寄りの人に投与する場合は必ず少量からその人の反応を見ながら増やしていかないと、いきなり量を出すと効きすぎて倒れてしまう事があります。外来の時は少量から様子を見ながら増やしていくのが基本です。

 もう一つ年齢が高くなると筋力の低下や色々な事に対する脳の対応する能力が落ちてきます。例えば睡眠薬だと若い人ではぐっすり寝れることがありますが、お年寄りの人は筋力の元々がレベルが低いのに薬を使うと下がってしまう。殆どの睡眠薬や精神安定剤、抗不安剤等は緊張が取れ、筋肉の緊張も取れるので、簡単にふらついたり、高齢者になると簡単に転倒します。うちの施設でも転倒して骨折事故が起こる事はあります。原則的に睡眠薬を飲ませないようにやっていますが、なかなかゼロにはならないですが努力はしております。

 またお年寄りは病気は一個ではありません。男の人だと高血圧・糖尿病・心臓が悪く・コレステロールが高い・眼科に行き・泌尿器科で前立腺を診てもらう。市民病院等では各科、専門科に診てもらうのでは、その日だけで内科で3つぐらいかかる方が結構います。診ている医者はその病気に対しての薬を投与します。いくつ位薬を貰うと思いますか。そういう人達が入所してくると、薬を見ると10~20位の薬を持ってきます。それが多剤併用という事で非常に問題になっています。元々一つの薬ですら飲むことに中毒症になったり、なかなか排泄されずに困るのに、5~6種類、10種類以上飲んでいる訳です。今の医学の本を読んだ場合に、薬と薬の併用の害は大体2種類に対して書いてあります。薬と薬が喧嘩して血中濃度が高くなったり、薬と薬で効きが悪くなるというのがざらにあります。そういう事がしっかり書いてありますが、5つ以上になるとそんなデータは全くありません。なのに医者は無責任に薬を出しています。しかも高齢者は薬に適応する能力はないのに出している。はっきり言ってすごく恐ろしい状態が起きております。薬剤の有害化現象がいっぱい起きる可能性があります。

 これをどうするかという事で、老年医学会。これは東大の教授が東大のデータを出したそうで、5種類位迄はある程度副作用がそう大きくは増えないが、6種類以上になると突然増えるというデータを出しました。なるべく薬は5種類以下にしないといけないという提案をしています。

 私も施設に入ってくる人の薬はなるべく5種類以下にしようとしておりますが、なかなか難しいです。例えば心臓が悪く、糖尿病があり、胃が悪く、前立腺がある。心臓が悪いとなると心筋梗塞には基本的にアスピリンを出します。抗血小板薬、これは日本人の場合簡単に出血を起こしやすく、胃潰瘍になりやすい。それを防ぐ為に胃潰瘍の薬を飲む。これで2種類になります。そういう人達は心不全を起こしますから利尿剤的な薬を出します。高血圧があれば高血圧の薬が1種類~2種類。コレステロールが高いのでコレステロールを下げる薬、胃が痛いのでその薬、糖尿病の薬は1~2つ、前立腺の薬1つ、眼科が出すかどうか。ちょっとやっただけであっという間に14~15になってしまいます。その中でどうやってやるかというのが私の自信も悩みの種です。

 処方する場合は治療の為の処方と予防の為の処方があります。将来病気にならない為の薬、コレステロールの薬がそうです。コレステロールが高くても皆さん痛くも痒くもないのですが、コレステロールがめちゃくちゃ高いから飲まなくてはいけない。これは完全な予防的な薬です。高血圧の場合も高血圧尿症や高血圧による障害がありますが、将来の高血圧予防という形で、どれが治療かどれが予防かはなかなか難しい所があります。予防的な薬は若い人には良いですが高齢者に将来、心筋梗塞が心配だからコレステロールの薬を飲みましょうと言ってその人が80歳の人に5年、10年先になるかもしれない予防の薬を飲ませる必要があるのか。薬に治療的な意味があるなら別ですが、予防的な意味合いだけで高齢者に出さなくてはいけないと言うことに対しては非常に疑問があります。

 治療する事はこの患者さんにとって何を優先順位に治療を決めるかが非常に重要です。私は癌があっても痛くも痒くもないが、美味しい物を食べて2~3年後に死んでもそれで良いと言うならそれも一つの考え方だし、癌を取って何とかしたいというのも一つの考えです。手術をすればそれなりにリスクも高くなるので、どう兼ね合いを取るかというのは自分の人生観という問題です。私はどうやって生きるかという問題です。

 私がとても勉強になったことがありまして、大動脈弁狭窄症という病気があるのですが、動脈硬化でなります。症状が出ると3年位で亡くなります。ある患者さんが少し症状があり、手術しないと後2年だよと言ったけれど私は海外の数カ所を見て死にたいと言われるので旅行が済んだら手術を受けてくれるか、80歳ですから限界ですよと話をしました。今では大動脈弁狭窄症の治療はカテーテル治療が特殊な施設でやれるようになったのですが、その当時はまだ手術しかありませんでした。その人は2~3旅行をしたので手術をしましょうと勧めていたのですがあともう2つ見たいということで家族も了承し、旅行から帰ってきて今度手術という間に突然他界されてしまいました。もしその時に手術をして、その人の命が2年か3年伸びて旅行がその時できたかどうかが分かりませんが、それで亡くなったのが幸せなのか、旅行が済んでから残念だけど亡くなってしまったのが幸せなのか。なかなか難しい問題で、私も難しい問題だなと思ったのですが、最近の考え方からで言うと、本人が行きたいと思っている事、やりたいと思っている事を実現させてあげるというのが今後の治療の方針になってくるのかと思います。

 ですから薬でも同じ事で何を優先するかが非常に重要だと思います。医学的にこういう事をする事が最善であると医師が言う事と、本人が患者の最善は何だという事とどうやって折り合いをつけるかという事が大切だと思います。薬をどんぶり一杯位飲んでいると言った方がみえましたが、本当にそんなにいるのかという気がします。そうかといって5人も6人も医者に掛かっていて、どの医者も俺の病気が一番大切だと言うに決まっているのでなかなか決まりません。日本の場合はあまりにも専門医志向が強すぎて、みんな各科の先生に掛かるので、昔ながらの掛かりつけ医がちゃんと出来て、その先生と相談してその先生がまた専門医と相談してどうするかという様に話を聞いて、その先生と人生観や家族の考え方等を考慮して薬を選択していかないといけない。

 実際にどんぶり一杯薬をくれると飲まなくなります。みなさん薬が一杯残っているんではありませんか。今は予約制が多いので決められた時に行くからどんどん、どんどん薬が増えていき、先生に薬が一杯残っているとも言えず、溜っていてしまう。これはすごい大問題で日本中で残薬がどれ位残っているかということを試算した人がいるのですが、多分1兆円近くになるのではないかというデータまであります。皆さん多分捨てていると思います。服だったら私いらない、余ってるからあげると出来ますが、この薬余ったからあんたにあげるという人はいないと思います。どうしても捨ててしまうしかないです。それをみんなが気をつけ、医者も気をつけて減らせば国が一生懸命ジェネリックにしようと言っている額よりも上回るんではないかという説もあります。薬を飲むのが本当に必要で、本当にこの人の為になるという薬を処方していかないと、国も皆さんの体ももたなくなってきます。ここにいる若い方はあなたの親世代を心配してあげないといけないと思います。長期に渡って若い人が5~6つも薬を飲む事は殆どありません。今のお年寄りは医者に行って薬を貰ってこなかったら何の為に行ったか分からんと言う人も多いですが、薬を貰う方がよっぽどが恐いと思う方が本当は正しいと思います。そういう時代になれば医者も本当にこれを飲まないとダメだよっていう薬を出すと思います。

 私自身、この施設にいると施設は治療しても医療費は取れません。介護報酬というのがあり、1日いくらと介護度によって決まっているのでその中でやる訳です。私が真面目に治療するとあそこの施設の収入はどんどん減る訳です。薬を出せばそれだけ持ち出しになるという事です。そういう訳ではないけれど、基本的に風邪をひいたならほっときゃ治る。風邪なんて3日か4日すれば治っていくものです。日本ではインフルエンザになるとみんなタミフルを出します。確かにタミフルを飲まなければいけない人はいます。すごい小さい子供とか心臓や腎臓、肺が悪い人は飲まなければならない事もありますが、一般の若い人は飲まなくてもいいんです。ほっときゃ治るんです。タミフルをどんどん出していくと、一番心配するのは将来タミフルが効かなくなるインフルエンザ、耐性ができるんじゃないかという事と無駄なお金をどんどん使っていて、世界のタミフルの使用量の60~70%は日本だという説もあります。そんなお金をやめれば最近騒がれている肺がんの治療薬にも使える訳です。そういう社会を作っていかないと、それは皆さんの意識の問題です。薬を無駄に使って耐性菌を増やしている。その病気自体を治しているのかどうかわからない状態になっている。人間には自然治癒力があるので、それに頼る方がよっぽどマシだという事です。ただある条件、心臓や腎臓が悪い人、超高齢者等医師が判断して使わなければいけないという人には使うというような社会を作っていかないといけないと私自身思っています。これは私が普通の病院に40年勤めた反省も込めまして考えた事です。

 私が病院にいる時に研修医に話していた事は、病気をおかして病院に行きます。ある程度薬が出て薬を飲んで最初に出てきた症状がなんだと言われた時に何を最初に疑えと研修医に言っているか。研修医に何が原因かと問うと研修医はみんな新しい病気だ言うんですがそうではありません。一番確率が高いのはあんたが出した薬のせいだ、まずそれを疑えと言っています。それを疑わない医師は薬を出して、それを飲んだら吐き気や寒気がすると言われたなら、それに対する薬をまた出します。薬を飲むのをやめれば治る。違う薬に変えれば治る。
そうやって薬をどんどん増やし、どんどん薬が増えます。実際かなりの頻度でこういうことが起こっています。まずあなた方がもらって、変な症状が出た時にこの薬のせいかなと思って、医者に相談する。もちろんその病気の色々な症状が遅れて出てくる場合もあるけれど、そういう確率の方がはるかに高く、それで薬を飲み続ける方が薬に対するあなた達に対する害は増える訳です。薬を止めてドラマチックに効く訳ではないのですが、様子を見て医者と相談して薬を変えるが方が良いと思います。これは医者にとっても鉄則だと私は思っています。最近うちの施設もこれが徹底されてしまったので、私が薬を出して次の症状が出ると、先生この薬のせいじゃないでしょうかと言われ、この薬やめときましたという様な話が出ます。その方が私も安全だと思うし、そこから医者が考えれば良いと思います。

 高齢者に対する治療というのはもちろん手術はかなり負担が掛かるので皆さん考えると思いますが、薬に対してもそういう意識を持って頂ければ良い事だと思うし高齢になった方にとっても悪いことではない。国にとっても悪い事ではないと思っております。以上です。

各委員会報告等

会長挨拶:中根会長

幹事報告:細川幹事

出席報告:久恒委員

スマイル発表:杉田委員

優秀スマイル発表:筒井委員

炉端会案内:野口君

中根会長挨拶 細川幹事報告 久恒出席報告
3ヶ月ホームクラブ賞 杉田スマイル委員 筒井スマイル委員
3ヶ月優秀スマイル賞 炉端会の案内

詳細はホームページをご覧下さい。 [http://kirara-rc.jp/kaihou.php]